TARTAROS JAPAN 個展『浮世絵紙幣2022』

时间:2022-10-08—2022-10-29

地点:東京都品川区東品川1-32-8 TERRADA ART COMPLEX II

はじめに TARTAROS JAPAN(T)

社会の中にある強大な 人間エネルギー「通貨=紙幣」。

人類は交換の歴史と共に繁栄した。 繁栄の過程で様々な文明や歴史を紡いできた。人間が地球上に作り出した、仮想世界=人工世界。 

その世界を動かすエネルギーとなっているのが 「紙幣」だ。

今回の展示 TARTAROS JAPAN『浮世絵紙幣 2022』では 葛飾北斎の浮世絵をサンプリングした絵画が並ぶ。荒波や富士山、背景の一部が紙幣の断片で構成されている。それは自然を私物化し、MONEYを生み出してきた私たちの営みを示唆するような光景である。

作品に使われている箔の色。これらは金・銀・銅という日々目にする硬貨の色を彷彿させる。葛飾北斎が描いた景色、T が描いた景色は 似ているようで明らかに違う。Tは北斎の浮き世絵図を伝承し紙幣をメディウムに現代美術表現を行っている。

これらの作品は Automatic Painting という手法で作られている。簡潔に説明するならば、無意識や身体の動きという今この瞬間、ランダムに決定されるモノゴトを取入れた手法である。

T はこの手法を使い、紙幣の断片をランダムに掴み画面に貼り付けていく。

Tは Automatic Painting を採用する理由として「アウトラインは引けても中身は選べないため」と述べている。作品を観ると確かにアウトラインの中にAutomatic Painting の手法が使われている。つまり、概要を想像することは出来ても中身は選べないモノゴトの構造をTは表現しているのだ。

さらに、T の表現を支えているのは日常生活の中で体得した「瞑想」で ある。T の言う瞑想とは目をつむり意識を他の並行世界へ移す、T 自身の体験である。この体験をもとに T は並行世界という概念を感覚として手に入れた。

T は「自身の作品はマルセル・デュシャンが考案したレディ・メイドの手法ではない」と述べる。この理由も並行世界という概念を 持つ者ならでは発想である。T はデュシャンを経由せずに現代で作品を作っていた。というのは、T 自身がアートを始めたのが40代であり、かつ、デュシャンとの接触がなかった。

そして T はある日デュシャンの存在を知るのである。T はその時デュシャンを経由しない方の道を選んだ。

その発想を可能にしたのが瞑想から手に入れた並行世界という概念である。T がデュシャンを避けた理由として感覚の欠落が挙げられる。
T は「デュシャンの作品は知的だが、感覚的な部分が欠落している」と述べる。T が述べる感覚とは視覚による刺激「色、形、質感」など「意味」の部分でない要素のことだ。T が行っているのはデュシャンの 仕掛けたアートゲーム以前から出発することでありまた、伝承や精神を重要視する活動である。

今回の展示では北斎の浮世絵図を継承した T が私たちに新しい景色をみせてくれることだろう。